フリーランスが加入すべき社会保険は?加入条件や加入手続きや保険料を抑えるコツを解説
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フリ転編集部 柿本
Webライター兼コンテンツディレクター。20年以上の人事キャリア経験をもとに、現在はHR分野からビジネス系インタビュー記事まで幅広く執筆中。
自分の身は自分で守らなければいけないフリーランスは社会保険も自分で加入し自分で全額負担します。万が一の事態に備えるために社会保険を含む保障を整えておくことは非常に大切です。しっかりと備えるための具体的な方法を知っておきましょう。

社会保険は怪我や病気など万が一への備えや老後の生活保障として加入する大切なもの。うまく活用すれば節税対策にもなります。。
目次
フリーランスが加入義務がある社会保険は国民健康保険と国民年金
社会保険とは保険料を支払うことでリスクに備える制度のことで、フリーランスが加入義務のある社会保険は「国民健康保険」と「国民年金」です。その他の社会保険(雇用保険や労災保険など)は、基本的にフリーランスには適用されませんが、特定の状況に応じて加入できる場合もあります。他にも任意加入できる保険や制度もあるので、万が一の際に備えて検討してみると良いでしょう。
そもそも社会保険の種類
社会保険とは「健康保険」「年金保険」「雇用保険」「労災保険」の4つを指しますが、フリーランスが加入できるのはそのうちの2つ「健康保険」「年金保険」のみです。会社員の際と加入できる保険の種類が異なるので切り替えなどの手続きが必要になります。
会社員とフリーランスの保険の違いは加入条件と負担率
次の表は、会社員とフリーランスで加入できる保険の違いです。
社会保険 | 内容 | フリーランスの場合 | 会社員の場合 |
健康保険 | 病気やケガの際の補償 | 国民健康保険に加入できる保険料は全額自己負担 | 勤務先の健康保険に加入できる保険料は会社と折半で5割負担 |
年金保険 | 老後の生活資金を支えるための制度 | 国民健康保険に加入できる保険料は全額自己負担 | 厚生年金に加入できる保険料は会社と折半で5割負担 |
雇用保険 | 失業した際に生活支援をするための保険 | 加入できない | 加入できる保険料は会社と折半で5割負担 |
労災保険 | 仕事中の事故や病気に対する補償 | 加入できない | 加入できる保険料は全額会社負担 |
フリーランスが加入できる社会保険の種類
フリーランスの社会保険には様々な選択肢があります。加入義務のあるものもあれば自分で選べる任意の制度も多く用意されているので、安定した生活を実現するために加入しておいたほうがいい制度があるかどうか知っておくことが必要です。
健康保険の場合
健康保険とは病気やケガの際に必要な医療費の一部をカバーする制度です。会社員として健康保険に入ると会社が保険料を5割負担してくれますが、フリーランスは全額自己負担になります。注意したいのは、病院でかかる費用の保障はありますが、フリーランスの場合、雇用保険や労災保険に入れないので、病気などでの休業中の休業補償や失業手当といった保障がないことです。
国民健康保険へ切り替えする
国民健康保険は市区町村が運営する制度で、フリーランスや自営業者、学生などが加入する保険です。市区町村の役所で申請すると保険証が交付されます。会社の健康保険から切り替える場合は退職日から14日以内に手続きが必要です。保険料は前年の所得をもとに計算され、全額自己負担となります。
社会保険を任意継続する
会社の健康保険に退職後も継続して加入する「任意継続被保険者」という選択肢もあります。会社の健康保険に最大2年間継続して加入することができる制度で、退職後20日以内に手続きをすればそれまでの健康保険をそのまま利用できます。希望する際は会社の人事部門、もしくは健康保険組合に任意継続の旨を連絡しましょう。こちらも保険料は全額負担になります。
年金保険の場合
フリーランスの年金の構造は会社員の場合と大きく異なり、会社を退職する際は切り替え手続きが必要になります。また、フリーランスとして加入義務のある年金保険の運用だけでは将来の不安があるため、老後の生活資金補完のため追加で私的年金も運用しておくと良いでしょう。
厚生年金から国民年金への切り替えが必須
厚生年金は会社員や公務員が加入できる公的年金のため、フリーランスになった際は国民年金へ切り替え手続きが必要になります。退社時に会社から交付される離職票(退職証明書)、年金手帳、本人確認書類を持ち最寄りの市区町村の役所で申請を行うと国民年金への切り替えができます。保険料は毎月一定額で、口座振替などの支払い設定ができます。
国民年金基金への加入
国民年金基金とは自営業・フリーランスを対象にした、国民年金に上乗せして加入できる公的な年金制度です。加入は任意ですが、将来の保障のために検討するとよいでしょう。申し込みをする場合は、基金のホームページより加入申出書を入手し、必要事項を記入後提出します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは国民年金にプラスして加入できる私的年金制度の一つです。確定拠出年金法にもとづいて運営され、自分で掛金を拠出、運用し、60歳以降にその元本と運用益を受け取ります。フリーランスの場合、掛金の全額が所得控除対象になるので節税にもつながり加入メリットが多いです。iDeCoは複数の金融機関で取り扱っているので、手数料や商品ラインナップなどを比較して取引する金融機関を選び、加入手続きを行います。
付加年金の導入
付加年金とはフリーランスや自営業者が加入できるもので、国民年金保険料を上乗せして支払うことで将来の年金額を増やすことができる制度です。希望する場合は国民年金への切り替えの際に市区町村の役所で付加年金も加入しましょう。国民年金への加入と同時申し込みでなくても、途中で追加することもできます。
フリーランスが加入できる労働・労災保険は基本的には適用外
業務に起因して傷病が発生した場合に出る労災保険はこれまでフリーランスは対象外とされていましたが、2024年11月のフリーランス保護を目的とした法改正により企業等から業務委託を受けているフリーランスも労災保険特別加入の対象になりました。また、労災保険の代わりとなる民間の傷害保険への加入も検討するとよいでしょう。
健康・年金保険も退職後14日以内に加入の手続きが必要
会社を辞めてフリーランスになる場合の社会保険切り替えの手続きはそれぞれ14日以内に行わなければなりません。企業を退職して健康保険から国民健康保険への切り替えを行わずに14日の期限を過ぎると、医療費をすべて自己負担でまかなわなければならなくなります。
CHECK
・会社員とフリーランスで加入できる社会保険が異なる
・フリーランスが加入義務があるのは国民健康保険と国民年金
・健康保険・年金保険それぞれ選択肢があるので自分に合うものを選ぼう
フリーランスの社会保険のメリット・デメリットや違い
フリーランスは社会保険料を全額自己負担しなければならないので、社会保険に入るメリットが小さいと感じるかもしれませんが、不安定なフリーランスだからこそ社会保険の加入は必須です。けがや病気などもしもの時のための経済保障として上手く使いましょう。
確定申告で社会保険料を控除ができるメリット
フリーランスが社会保険に入る大きなメリットは社会保険料を控除できることです。フリーランスとして確定申告をする際に、控除を最大限活用して税負担を軽減することで、手取り額を増やすことができます。
自己責任範囲が大きいデメリット
フリーランスは社会保険に自己責任で加入・管理しなければなりません。保険料の負担も大きくなります。加入できる保険も限られており、企業に勤めるより社会保障が薄いということも考慮しましょう。
傷病手当金と出産手当金がない
病気やケガで働けない場合の保障になる傷病手当金と、出産のために仕事を休む場合に出る出産手当金は国民健康保険では支給されません。それぞれの手当ての支給を受けるためには国民健康保険には加入せず任意継続被保険者になるもしくは配偶者の扶養に入るなどの手段が必要です。
家族が扶養に入れられない
国民健康保険には扶養がないため、フリーランスになって国民健康保険に加入した場合家族を扶養に入れることができません。いままで配偶者やお子さんが扶養に入っていたとしても、国民健康保険に移行した後は世帯全員が国民健康保険に加入し、保険料(国民健康保険税)を納付する必要があります。
保険料が全額自己負担
会社の社会保険に入っている時には会社が保険料を5割負担してくれますが、フリーランスは保険料をすべて自分で負担しなければなりません。そのため会社員の時と比べて保険料の支払い額が大きく感じられることがあります。
厚生年金の上乗せがない
厚生年金の上乗せとは、厚生年金の基本的な給付に追加して退職後に受け取る年金額を増やすことです。会社員の場合、企業年金と呼ばれる企業が自ら設ける年金制度があり、企業が掛け金を拠出し厚生年金の受給額を上乗せすることができますが、フリーランスは国民年金への加入になり厚生年金の上乗せができません。
保険料が経済的負担になる
フリーランスは社会保険料を全額自己負担で払わなければならないため、経済的負担が大きくなります。ただ、支払った国民年金や健康保険の保険料は確定申告で経費として計上できるので、結果として節税にもなります。
フリーランスが社会保険に入らないとどうなる?
フリーランスは国民年金、国民健康保険の社会保険に加入する義務があります。社会保険に加入しない場合、医療費が高額になる、年金が少なくなる、税金面で不利になるなどのリスクがあります。また、国民健康保険を含めた公的医療保険に入らなかった場合、過去2年分さかのぼって未納分の保険料を請求されるので注意が必要です。安定した生活を送るために、社会保険にはきちんと加入しましょう。
CHECK
・社会保険料は控除でき節税につなげることができる
・保険料全額自己負担など責任範囲が大きい
・安定した生活のためにも社会保険はしっかり検討する
フリーランスの社会保険の計算方法・シミュレーション例
保険料の金額を把握し計画的に支払いを行うことがフリーランスの資金繰りとしても重要になります。
健康保険料の計算方法は均等割と所得割で異なる
健康保険料は前年の所得を基に計算される「所得割」、世帯人数に基づく「均等割」、世帯に対して課せられる「平等割」の3つの要素を合算して算出されます。所得に応じて保険料が変動するため、収入が多いと保険料も高くなります。
均等割の計算方法
均等割とは「所得額に関係なく均等に課される保険料額」です。被保険者の人数に応じて保険料額が増える仕組みです。
所得割の計算方法
所得割とは「前年の所得額をもとに計算する保険料額」です。前年の課税所得(総収入額 – 経費 – 基礎控除など)× 所得割の保険料率で算出されます。所得割の保険料率は、自治体によって異なるので市区町村に問い合わせましょう。
年金保険料の計算方法は保険料額×保険料改定率
フリーランスが支払う年金保険料は、所得に関わらず年ごとの定額制です。物価や賃金の伸びにより保険料は毎年調整され(保険料改定率)、2025年度の国民年金保険料は、月額16,610円となっています。
CHECK
・保険料を把握することは資金繰りの一環としても大切
・健康保険料は所得や被保険者の人数により増える
・年金保険料は年ごとの定額制
フリーランスの保険料を抑える方法
国民健康保険の保険料は住民税や所得に基づいて算出され、所得が多くなると保険料が高くなります。健康保険料を安く抑えるための方法も知っておきましょう。
任意継続被保険者になる
会社員から独立してフリーランスになる場合は、「任意継続被保険者」という選択があります。任意継続被保険者とは、会社で加入している企業健康保険を退職後も最長2年間、任意で継続できる制度です。退職した日から20日以内に手続きを行う必要があり、20日を過ぎると継続資格は失いますので継続希望の場合は早めに人事部門に伝えて手続きをしましょう。
保険料負担が少ない自治体に引っ越しをする
国民健康保険は市町村ごとに保険料が異なります。ご自身が住んでいる自治体の保険料を確認し、ほかの自治体と比較することができます。自治体ごとに保険料が公開されているので、ホームページをチェックして比較してみましょう。
国民健康保険組合が母体の国民保険に入る
国民健康保険組合とは特定の業界や職種に属している人が加入できる健康保険団体です。デザイナーやライター向けの組合やIT業界やクリエイティブ業界に特化した組合などがあり、WEBデザイナーの場合ですと「文芸美術健康保険組合」が該当します。これらの健康保険に加入することで所得にかかわらず保険料が一定になり、保険料の負担軽減につながります。加入の際は、組合の加入条件がありますのでホームページで確認しましょう。
被保険者の場合には配偶者の扶養に入る
配偶者が会社員であり、自身のフリーランス収入が年間130万円以内であれば、配偶者の扶養に入ることができます。自分で健康保険に入って保険料を払う必要がなくなり、フリーランスにはない社会保険サービスを受けることができるという大きなメリットがあります。
フリーランスは社会保険以外に民間保険に入るべきか?
フリーランスは病気や事故などで働けなくなった際の備えを作っておく必要があります。医療保険や生命保険、収入保障保険などの民間保険は収入減に備えるために有効です。特に収入保障保険や所得補償保険はフリーランスで収入が不安定になった際に助けとなるものですので、事業の状況や生活費の状況、将来の収入計画と照らし合わせて検討しましょう。
社会保険の切り替えは手残りを多くする選択肢を選ぶ
フリーランスとして入れる社会保険の種類や計算方法を理解し、手取りを多くするための適切な選択をすることで無駄な支出を抑えることができます。社会保険控除などを活用し、保険料や経費を上手く管理しましょう。
CHECK
・保険料の全額自己負担を避けて支出を抑える方法もある
・社会保険以外の民間保険も検討するメリットはある
・社会保険の検討の際は手取りを多くする選択肢を選ぶ

会社員の場合と加入できる条件や負担額が大きく異なるフリーランスの社会保険。社会保険についてしっかりと理解し、自分の状況に合わせた最適な選択をして節税や手取り額アップにつなげるのがポイントです。