フリーランスが作るべき印鑑。印鑑の種類・用途・具体的な作成方法と電子印鑑の準備も解説
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フリ転編集部 柿本

Webライター兼コンテンツディレクター。20年以上の人事キャリア経験をもとに、現在はHR分野からビジネス系インタビュー記事まで幅広く執筆中。

フリーランスとして仕事をスタートするときに印鑑を作ったほうが良いのか、必要ないのか?と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。「印鑑を新しく作らなくてもフリーランスとして始めることができるが、あったほうが便利なので作ったほうが良い」というのが結論です。では、どのような場合に必要なのか?どんな種類の印鑑が必要なのか?をこの記事でわかりやすく説明します。

フリーランスであっても印鑑を作りましょう!法人登記と異なり必ず必要ではありませんが、事業用の印鑑を使うことでビジネス上の信頼度がアップして取引先とのやりとりが好印象になりますよ。

フリーランスは「個人の実印と銀行印」だけでも始められる

フリーランスとして仕事を始めたい場合、印鑑が必要な場面は大まかに以下2つに分類されます。

  • 事業用の銀行口座を開設する
  • 事業を行う中で発生する書類捺印に使う

まず、フリーランスとして事業を始めるにあたり、プライベートの口座と分けた新しい銀行口座が必要です。個人の銀行口座とビジネスの銀行口座を兼用すると、お金の管理がしづらくなり、会計ソフトとの連携や確定申告の手続きの手間が大きくなります。事業用に分けた口座開設のためにまず「事業用の銀行口座を開設するための銀行印」が必要です。

実際に事業を始めた際、契約書や請求書などさまざまな書類に捺印をする場面が出てきます。ビジネスとしての信用度アップのためには屋号(ビジネス名、ブランド名)の入った事業用の印鑑で捺印ができれば良いですが、屋号がなく新しく印鑑を作る余裕がない場合は「個人の実印」を使っても問題ありません。

なお、2021年4月以降は税制改正により税務署に提出する書類への押印が不要になりました。開業届も確定申告書も印鑑なしで提出できるようになっています。会社間のやりとりでも電子署名やデジタル文書による契約が一般的になってきており、契約の際に印鑑を使う機会が減りました。これらの理由により最近では事業用の印鑑がなくても「個人の印鑑(個人の実印)」で事業を行うことが可能になっています。

フリーランスが作るべき印鑑は「事業用の丸印・角印・銀行印」

新しい印鑑を作らなくてもフリーランスとして事業を始めることは出来ますが、私用と事業用で用途を分けて印鑑をそろえておくことをおすすめします。

事業用の印鑑を使い分けることで以下のようなメリットが生まれます。

  • フリーランスとしての信用度が上がる

事業用の印鑑を使うことによりビジネスの信頼性や信用度が高まります。プロフェッショナルとして事業を行っていることを相手に印象付け、安心して取引をしてもらうことが出来ます。屋号を持っている場合は屋号が記された印鑑を使うとさらに良いでしょう。

  • プライバシー保護や紛失時の損害防止になる

印鑑を一つにまとめることで、個人情報が漏れやすくなり紛失時のリスクが高まります。私用と事業用で印鑑を使い分けることにより、不要な個人情報が漏れるリスクを回避することが出来ます。

事業用に印鑑を新調する際、フリーランスとして持っておきたいのは「丸印」「角印」「銀行印」の3点。ちなみに銀行印と個人の実印は兼用可能なので「丸印」と「角印」の2点のみでも手続き面では問題ないのですが、印影の悪用などのリスクがあるのでおすすめできません。「丸印」も「角印」も「銀行印」もインターネットの印鑑専門店で買うことが出来ます。

将来法人化を考えている場合は、法人設立登記の際に「丸印」「角印」「銀行印」の3点セットが必要になるので、今のうちに作っておくと良いでしょう。

CHECK

印鑑を新しく作らなくても「個人の実印」と「銀行印」でフリーランスは始められる
信頼確保やリスク防止の観点からは個人用の印鑑と事業用の印鑑は分けたほうが良い
フリーランスとして作るべき印鑑は「丸印」「角印」「銀行印」の3点セット

フリーランスが日常的に使用する事業用印鑑「丸印」と「角印」の役割の違い

フリーランスとして日常的に使う「丸印」と「角印」の違いを説明します。ちなみに「銀行印」は銀行などの金融機関で口座開設をする為の印鑑ですので、日常的に使うものではありません。

屋号名と代表者名が記載される「丸印」は重要な契約に使う印鑑

丸印はその名の通り丸い形の印鑑です。二重構造になっており、外枠に屋号、内枠に代表取締役之印という文字が入る作りになっています。実印、代表印とも呼ばれ、契約書や取引書類などの法的な文書に使います。屋号がない場合は、プライベートの印鑑とは別に事業用の丸印を個人名で作れば問題ありません。

屋号名のみ記載される「角印」は見積書・請求書など対外書類に使う印鑑

角印は四角い形の印鑑で、屋号だけが入ったもので屋号印とも呼びます。丸印が二者間の正式な契約書など重要な書類に使われるのに対して、角印は領収書や請求書といった対外書類に使います。

企業によっては「角印が押されていない見積書は受け付けない」といったルールもあるので、フリーランスであっても作っておいて損はないでしょう。

角印は印鑑登録をするものではないので法的効力はなく、種類としては認印(確認した旨を示すためのもの)に分類されます。

屋号がない場合は角印を作らなくても事業用の丸印で代用可能です。ただ、角印があったほうが対外的な信用度が上がるので屋号と角印の作成はぜひ検討しましょう。

CHECK

「丸印」は屋号と代表者が記載されており契約書など法的な書類に使う
「角印」は屋号が記載されており見積書・請求書など対外書類に使う
「角印」は種類としては法的効力のない認印に分類される

「実印」の手続きが必要な場合は個人の実印と印鑑証明書で対応する

フリーランスとして事務所を設けるため不動産契約をしたい、自動車を使う仕事をするので自動車を購入してローンを組みたいといった際に「実印」が必要になることがあります。「実印」とは、役所に印鑑登録している公的に認められた印鑑のことを指し、重要な契約や手続きをする時に欠かせないものです。

フリーランスは法人登記の印鑑登録がないので会社としての実印というものがなく、実印が求められる取引の際には印鑑登録している「個人の実印」と「印鑑証明書」で対応します。

印鑑登録は住民票登録されている市区町村の窓口にて、本人確認できる証明書と申請書を提出すれば手続き出来ます。もし個人の印鑑登録が済んでいない場合はフリーランスを始める時に手続きをしておくと良いでしょう。

フリーランスが印鑑を購入する時に注意すべきポイント・ルール

それぞれの印鑑を作る際に最低限押さえておきたいポイントや、一般的な仕様を説明します。まず印鑑の大きさですが、丸印>銀行印>角印の順にサイズが小さくなるのが一般的です。効力が大きな印鑑ほど大きく作られます。

男性用は大きめ、女性用はやや小さめが推奨されることが多いですが、その通りに作らないと使えないということはありません。自分の好みや使いやすさに合わせて作りましょう。

印鑑に使う書体ですが、選び方があります。事業で使うものは「偽造されにくさ」「耐久性」「読みやすさ」などを考慮したフォントを選ばなければいけません。また、作る際には自分の目でデザイン確認を行いましょう。

素材に関しては、動物の角や牙、木材、チタンなどの金属など様々なものがありますので、予算や好みに応じて選ぶことが出来ます。

「丸印」は欠けにくい「吉相体」で13.5〜15.0mm以上の大きさにする

  • サイズ

13.5〜15.0mm以上

  • 書体

重要な取引で使う丸印に良く使われるのが「吉相体」です。「印相体」とも呼ばれます。文字の線が外枠に向かって広がるようなデザインになっており、末広がりで縁起が良いとされています。線が太く、文字と枠が接する部分が多いので欠けにくいというメリットがあります。

<<吉相体 のイメージ画像>>

「角印」は見やすい「隷書体」で18.0〜24.0mmの大きさにする

  • サイズ

18.0〜24.0mm

  • 書体

角印は記載されている法人名が読みやすいようにシンプルな「隷書体」がおすすめです。バランスの取れたデザインの文字は明瞭で堅実な印象を与えてくれ、文字数に合わせて縦横のアレンジがしやすい書体です。

「銀行印」は偽造しにくい「篆書体」で12.0〜13.5mm以上の大きさにする

  • サイズ

12.0〜13.5mm以上

  • 書体

銀行印は悪用を防ぐため、偽造や盗用防止に効果の高い「篆書体」にしましょう。日本国パスポートやお札にも採用されている書体です。

「電子印鑑」の準備も電子契約のために同時に進めておく

電子契約で契約を取り交わすケースも増えているため、印鑑を作るタイミングで電子印鑑も同時に作ってしまいましょう。「電子印鑑」とは、パソコン上の文書に印鑑を押印できるようにするものです。「電子印鑑」の準備方法は2通りあります。

  • 印影画像を自分でスキャンする

印鑑を白い紙にきれいに押印し、スキャナーでスキャンをしてパソコンに取り込みます。正方形にトリミングをし、背景を透過させればオンライン捺印として使える電子印鑑画像が出来上がります。

  • 電子印鑑作成ソフトを使う

自分で作った電子印鑑画像データは簡単に複製されやすくリスクが高いものです。セキュリティ対策として画像データに使用者情報を持たせた「電子印鑑」がおすすめです。誰が押印したのかを識別することで、偽造や悪用のリスク軽減効果があります。「電子印鑑GMOサイン」や「My電子印鑑」など識別情報付きの電子印鑑を作成する有料サービスに申込をし、印鑑のデータを送るだけで作成することができます。

CHECK

フリーランスの活動で実印が求められる場合は個人の実印を使う
事業用印鑑は大きさやフォントにはルールがある
電子印鑑はセキュリティの高い識別情報付きのものがおすすめ

印鑑を作る費用は「消耗品費」として事業経費に全額計上できる

印鑑の購入や印鑑登録にかかった費用は事業経費として計上可能です。勘定科目は定められていませんが、消耗品費として処理されることが一般的です。確定申告の際に漏れのないように収支にまとめておきましょう。

フリーランスが事業用印鑑を紛失した場合は「銀行・警察」へすぐに連絡

印鑑は会社の顔となる大切なもの。持ち歩くものではないので紛失することは少ないはずですが、紛失・盗難には十分注意が必要です。紛失した場合は、印鑑の種類によって対応が変わってきます。

  • 銀行印を紛失した場合

すぐに銀行と警察に届け出ます。銀行には早めの連絡が必要なので、夜間など窓口が開いていない時間帯は「紛失受付センター」へ連絡します。銀行へ印鑑紛失の旨が伝わると該当の印鑑での入出金や取引が停止され、悪用を防ぐことが出来ます。その後新しい印鑑を用意して銀行印の登録をしなおします。警察には紛失届を提出します。

  • 印鑑登録している実印を紛失した場合

印鑑登録をしている市町村と警察へ届け出ます。印鑑登録書と本人確認が出来る証明書と共に、印鑑登録亡失届を役所へ提出します。これにより印鑑証明書が不正に発行されるのを防ぐことが出来ます。もし印鑑が見つからない場合は、以前の印鑑登録を廃止し新しい印鑑の登録も行います。同時に警察には紛失届を提出します。

  • 印鑑登録していない印鑑(丸印、角印)を紛失した場合

会社の取引時に使う大切な印鑑なので、きちんと警察に届け出をします。誰かが落とし物として届けてくれた際にすぐに連絡がもらえるように警察署で紛失届出証明書や盗難届出証明書をもらっておきます。

新たな気持ちでスタートする決意も込めて、フリーランスを始める際には「丸印」「角印」「銀行印」の3点セットを作りましょう。電子契約が主流になってきているので同時に電子印鑑の用意もおすすめします。

本格的な活動を視野に入れて事業用の印鑑を作る

印鑑を使う機会が減ってきているとはいえ、信用度を上げるために欠かせない事業用の印鑑。WEBデザイナーなどWEB案件が中心のフリーランスであっても是非作っておきましょう。

フリーランスにとって、コミュニケーション能力やスケジュール管理能力と並び事務処理力も大切なスキルの一つです。取引先へ提出する書類の見やすさや印鑑の有無によって信用力が左右されることも留意すると安定的な案件獲得につながります。

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