その手があったのか!“別生計の家族”が最強の経費要員に!?
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jpndesft
大手新聞社で編集オペレーターを務めた後、奈良日日新聞社に入社し、制作課主任として編集業務全般(紙面組版をはじめ、記者・広告制作、デザイン業務など)に従事。休刊後はフリーランスとして本格的に活動を開始し、新聞組版のほか、地方紙やウェブメディアでの原稿執筆も行う。
個人事業主やフリーランスとして活動する中で、事業の拡大に伴い家族の力を借りることも少なくありません。その際、「生計を一にする家族」と「生計を一にしない家族」では、給与の支払い方や税務上の取り扱いが大きく異なります。特に「生計を一にしない家族」への給与は、適切に活用することで節税効果が期待できる重要な手段です。この記事では、個人事業主が「生計を一にしない家族」に給与を支払う際の仕組みや注意点、効果的な活用法について解説します。

生計を一にしない家族への給与は、青色・白色申告に関わらず全額経費計上できる有効な節税策です。ただし実際の労働実態を伴い、適正な金額設定が必須です。勤務記録や給与明細などの証拠書類を残し、「生計を一にしない」証明を明確にすることで、税務リスクを回避しながら節税効果を最大化できます。
「生計を一にしない家族」とは何か
生計を一にしない家族の定義
「生計を一にしない」とは、簡単に言えば「家計が別である」状態を指します。税法上では、日常生活における収入と支出を別々に管理している状態と定義されています。同じ家族であっても、収入や生活費を共有していない場合は「生計を一にしない」と判断されます。
判断要素 | 生計を一にする場合 | 生計を一にしない場合 |
収入の管理 | 収入を共有・合算する | 各自が独立して管理する |
生活費の負担 | 共通の財布から支出 | 各自が独自に負担する |
生計の依存度 | お互いに依存している | 経済的に独立している |
生活スタイル | 一体的な生活 | 独立した生活 |
生計を一にしない家族の具体例
「生計を一にしない家族」には、以下のようなケースが含まれます。
- 同じ住所に住んでいるが家計は別
同じ住所に居住していても、収入や支出を別々に管理している場合は「生計を一にしない」と判断されることがあります。例えば、親と同居する社会人の子どもが家賃や食費を定額で支払い、その他の生活費も自分で管理している場合などです。
- 正式な婚姻届を出していない
事実婚(内縁関係)のパートナーは、基本的に「生計を一にしない」と見なされます。ただし、実際の生活実態によっては「生計を一にする」と判断されるケースもあるため、日常生活での経済的な独立性が重要です。
- 子どもが自立し別の家で暮らしている
独立して別居している子どもは、基本的に「生計を一にしない」と判断されます。ただし、親が生活費の大部分を負担しているような場合は、「生計を一にする」と見なされる可能性があります。
- 両親が年金生活をしている
年金で生活する両親が、子どもとは別に家計を維持している場合は「生計を一にしない」と判断される可能性が高いです。それぞれが独自の収入で生計を立てていることが条件となります。
生計を一にするか否かの判断基準
「生計を一にする」か否かの判断は、形式的な要件だけでなく実質的な生活実態に基づいて行われます。以下の観点から総合的に判断されます。
判断基準 | 詳細 |
経済的独立性 | 収入源が別で、互いに依存していないか |
居住形態 | 同居していても生活空間や費用負担が明確に分かれているか |
収支の管理 | 銀行口座や家計簿が別々に管理されているか |
契約関係 | 住居の契約名義や公共料金の支払い名義が別々になっているか |
CHECK
・生計を一にしない家族とは、収入支出を別々に管理し経済的に独立した家族を指す
・同居家族や事実婚パートナー、独立した子どもなども該当する
・形式だけでなく実質的な生活実態から総合的に判断する
個人事業主の「生計を一にしない家族」での節税メカニズム
節税の基本的な仕組み
個人事業主が「生計を一にしない家族」を雇用して給与を支払う場合、その給与は「労務の対価」として経費に計上できます。これは、「生計を一にする家族」への給与と大きく異なる点です。
【「生計を一にする家族」の場合】
- 青色申告者は「青色事業専従者給与」として経費計上可能(事前届出が必要)
- 白色申告者は「事業専従者控除」として一定額のみ控除可能(配偶者86万円、その他50万円まで)
【「生計を一にしない家族」の場合】
- 青色・白色申告に関わらず、適正な給与であれば全額を「給与賃金」として経費計上可能
- 特別な届出は不要
個人事業主の生計を一にしない家族に対する給与の上限
「生計を一にしない家族」への給与に法的な上限はありませんが、「労務の対価として適正」であることが求められます。具体的には以下の点に注意が必要です。
考慮すべき点 | 詳細 |
業務内容 | 実際に行っている仕事の内容と量 |
労働時間 | 勤務時間や日数が適切か |
市場価値 | 同様の業務の市場相場に見合った金額か |
事業規模 | 事業の収益に対して不相応に高額でないか |
不自然に高額な給与を設定すると、税務調査の対象となり、経費として認められない可能性があります。一般的には、その人の労働内容や時間、スキルに見合った金額を設定することが重要です。
個人事業主の生計を一にしない家族への給与計上・明細の記載方法
「生計を一にしない家族」への給与を経費として計上するためには、適切な書類作成と記録が必要です。
給与計上の基本的な流れ:
- 雇用契約書の作成:業務内容、勤務時間、給与額などを明記
- 勤務記録の保管:タイムカードや業務日誌など
- 給与明細の作成:給与額、控除項目などを明記
- 支払いの証明:振込記録や領収書の保管
- 帳簿への記載:「給与賃金」などの勘定科目で計上
給与明細には以下の項目を記載します。
記載項目 | 詳細 |
支給額 | 基本給、手当など |
控除額 | 源泉所得税、社会保険料など |
差引支給額 | 実際に支払う金額 |
支払日 | 給与の支払日 |
支払者・受取者 | 事業主と従業員の名前 |
個人事業主の生計を一にしない家族への給与の勘定科目
「生計を一にしない家族」への給与は、通常の従業員と同様に「給与賃金」として計上します。複式簿記の場合の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
給与賃金 | 200,000円 | 現金(または預金) | 180,000円 |
源泉所得税預り金 | 20,000円 |
なお、個人事業の場合、以下のような勘定科目でも計上可能です:
- 「人件費」
- 「アルバイト代」
- 「パート代」
勘定科目は業種や会計ソフトによって若干異なることがありますが、要は「従業員への報酬」として明確に区分できれば問題ありません。
CHECK
・生計を一にしない家族への給与は青色・白色申告に関わらず全額を経費計上できる
・給与に法的上限はないが労務の対価として適正な金額設定が必要
・適切な書類作成と記録を残し給与賃金として正しく勘定処理する
生計を一にしない家族への給与支払いにおける実務と注意点
生計を一にしない家族へ給与を支払う場合の注意点
「生計を一にしない家族」への給与支払いは、税務調査の対象になりやすい項目です。以下の点に注意して適切に対応しましょう。
注意点 | 対応策 |
実態を伴う労働 | 実際に業務に従事し、その記録を残す |
適正な給与額 | 業務内容・時間に見合った金額設定 |
書類の整備 | 雇用契約書、勤怠記録、給与明細などを整備 |
振込による支払い | 現金ではなく口座振込で支払う |
源泉徴収 | 所得税の源泉徴収と納付を適切に行う |
特に重要なのは「実態を伴う労働」の証明です。家族だからといって適当な金額を設定するのではなく、実際の労働時間や業務内容に基づいた適正な給与を設定することが大切です。
個人事業主の生計を一にしない家族に対する福利厚生と雇用保険の適用
福利厚生は対象外
個人事業主の場合、一般的な企業のような福利厚生制度を設けることは難しく、「生計を一にしない家族」に対しても福利厚生費として計上できる項目は限られています。
個人事業の場合、以下のような費用は原則として「福利厚生費」として認められません:
- 家族旅行の費用
- 家族の食事代
- 家族の医療費や保険料
ただし、明確に業務に関連する以下のようなものは経費として認められる可能性があります:
- 業務上必要な研修費
- 作業用の制服や備品
- 業務上の怪我や病気の治療費
雇用保険は加入手続きが必要
「生計を一にしない家族」であっても、労働時間や雇用形態が条件を満たせば雇用保険に加入することができます。加入条件は以下のとおりです。
条件 | 詳細 |
労働時間 | 週20時間以上の勤務 |
雇用見込み | 31日以上の雇用見込みがある |
適用事業所 | 雇用保険の適用事業所である |
雇用保険に加入する場合は、最寄りのハローワークで手続きを行います。必要書類は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 事業主の印鑑
- 雇用契約書(写し)
- 本人確認書類(写し)
生計を一にしない家族への給与と税務調査
「生計を一にしない家族」への給与支払いは、税務調査でチェックされやすい項目です。以下の点に注意して適切に対応しましょう。
税務調査のポイント | 対応策 |
労働の実態証明 | 勤務記録や業務日誌を残す |
給与額の適正性 | 業務内容に見合った金額設定 |
「生計を一にしない」証明 | 別居や経済的独立の証拠を残す |
支払いの証明 | 振込記録や領収書を保管する |
特に「生計を一にしない」ことの証明は重要です。同居している場合は、光熱費や家賃の負担割合、食事の別会計など、家計が別であることを示す証拠を残しておくと良いでしょう。
専門家への相談の重要性
「生計を一にしない家族」への給与支払いは、節税効果が期待できる一方で、税務上のリスクも伴います。不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。特に以下のようなケースでは専門家のアドバイスが役立ちます。
- 「生計を一にしない」の判断が難しい場合
- 適正な給与額の設定に迷う場合
- 税務調査を受ける可能性がある場合
- 青色申告と白色申告のどちらが有利か判断したい場合
専門家のアドバイスを受けることで、適切な節税対策と税務リスクの回避を両立させることができます。
CHECK
・実態を伴う労働の証明と適正な給与設定が税務調査対策として重要
・福利厚生費は限定的だが雇用保険は条件を満たせば加入できる
・労働実態や生計分離の証拠を残し必要に応じて専門家に相談する
「生計を一にしない家族」への給与支払いは、個人事業主にとって有効な節税手段となります。青色申告・白色申告にかかわらず、適正な給与であれば全額を経費として計上できるため、事業所得を減らし税負担を軽減する効果があります。
ただし、その活用には「生計を一にしない」ことの明確な証明と、実態を伴った適正な労働・給与設定が不可欠です。家族であっても実際に業務に従事し、その労働の対価として適正な金額を支払うことが重要です。
適切な書類の作成・保管や、雇用保険などの手続きも忘れずに行いましょう。不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談し、節税と税務リスクの回避を両立させながら、家族の協力を得て事業を発展させていきましょう。